「落日」を読んで

「落日」
湊かなえ著 角川春樹事務所

うちに一番近くの図書館はとても小さく蔵書数がかなり少ないですが、新刊やテーマを決めてピックアップしてあったりします。
その図書館でリクエストランキング2位(ちなみに1位は「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」)のこの本が偶然ありました。
湊かなえさんの本はテンポがよく読みやすく一気読みできるので何冊か読んだことがあったので借りることにしました。

湊かなえさんというと「イヤミス」の女王とよく言われるので今回も事前知識がなかったのでそういうストーリーかなと思いながら読み進めました。
この「落日」はミステリーではありましたがイヤミスではなく、登場人物たちが自分をみつめて再生していくストーリーでした。

大きくは二人女性がメインキャラクターでした。
一人は脚本家。
二人目は有名な賞を取った若手の監督。

若手の監督は母親が厳しく、幼いときに問題集を山のようにして少しでも間違えればベランダに追い出される虐待を受けていました。
教育虐待です。
ベランダに追い出されたときは寒さに震え、悲しい気持ちになっていましたが、隣の部屋のベランダにも同じように追い出され虐待をされている子どもがいました。
声を出さず、手の合図だけでやりとりをする秘密のともだち。
とても大きな支えになっていました。

しかし、そんなことも続かずに監督のほうは引っ越すことになります。
そして隣の部屋の家族は数年後、兄が妹を殺害し、両親が寝ている家に火をつけるという事件が起こっていました。
その事件が起こった町で育った脚本家。

なぜ事件は起こったのか、ベランダのともだちはどうなったのかという視点で物語は進んでいきます。

虐待は身体的虐待、性的虐待、ネグレクトのほかに心理的虐待、そして教育虐待もあります。
「あなたのために」と言いながら親は一生懸命勉強をさせます。
でもじつはその「あなたのために」はダミーで親自身が問題を抱えてそれを投影していることが多いように思います。
○○ができたらいい子」「できなかったらダメな子」「頑張ったらできる」「頑張り屋さんだもんね」などは対価や評価がないと認められない不安がつきまといます。
イヌのトレーニングにしてもこれができるといいマナーのイヌ、これができないのはダメイヌとすぐに評価されます。
他人の評価をきにしながら生きていくのはとても生きづらく、
「もっと頑張らなきゃ認めてもらえない」とか「○○ができないなんてなんて自分はダメなんだろう」と思うように呪いをかけられるように思います。

そうではなくいるだけでいいというメッセージを伝え続けることが大事で、失敗しても大丈夫とおおらかに見守ることこそのびのびと生きていく土台になるのではないかと思いました。

自分の過去を紐解いていくことは苦しいことですが、向き合うことで疑問が晴れたり、生きやすくなるのだなと思いました。

イヤミスではなかったけれど、読みやすくサラサラと1日で読めます。

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